「払えと言われた金額」が必ずしも正しいわけではない

不倫が発覚したとき、被害を受けた側は当然、相手に対して慰謝料を請求したいと考えます。一方、請求された側は「この金額は妥当なのか」と不安を抱えることになります。じつは、不倫慰謝料の金額は一律ではなく、個々の事情によって大きく変わります。請求された金額がそのまま認められるとは限りませんし、逆に思ったより低い金額しか認められないケースもあります。
不倫慰謝料が減額される理由にはいくつかのパターンがあります。婚姻関係の実態、不倫期間の長さ、証拠の状況、当事者の行動……これらが複雑に絡み合い、最終的な金額が決まります。どちらの立場であっても、「なぜ減額されるのか」という仕組みを知っておくことは、冷静に現実と向き合うための第一歩になるはずです。
そもそも不倫慰謝料はどのような法的根拠で請求されるのか

不倫(不貞行為)に対する慰謝料は、e-Gov法令検索で確認できる民法第709条(不法行為による損害賠償)および第710条(財産以外の損害の賠償)を根拠としています。配偶者の不貞行為によって精神的苦痛を受けたことに対する「損害賠償」という位置づけです。
ポイントは、「精神的苦痛に対する賠償」という性質上、その苦痛がどれほど大きかったかによって金額が変わるという点です。苦痛の大きさは画一的に測れるものではなく、婚姻関係の状況や不倫の態様など、さまざまな事情が考慮されます。そのため、「不倫した=必ず○○万円」という固定した答えは存在しないのです。
慰謝料が減額される主な理由と判断要素

裁判や示談交渉の場で慰謝料が減額されやすいとされる代表的な理由を見ていきましょう。
まず挙げられるのが、婚姻関係がすでに破綻していたというケースです。不倫が発覚した時点で、夫婦がすでに別居状態にあった、長期間会話がなかったなど、実質的に婚姻関係が終わっていたと認められる場合、「守られるべき婚姻関係」が存在しないとして慰謝料が大幅に減額される、あるいは認められないと判断されることがあります。
次に、不倫期間が短く、肉体関係が一度きりだったような場合も減額の要因となりえます。継続的な不倫関係と比べて精神的苦痛の程度が低いと判断されやすいためです。もちろん一度であっても精神的ダメージが大きいことは確かですが、法的な評価においては期間や回数が考慮されます。
証拠が不十分な場合も、請求できる金額に影響します。「不倫があった」という事実を立証できなければ、請求そのものが認められないこともあります。逆に言えば、請求する側にとっては証拠の確保が非常に重要になります。
さらに、不倫相手が既婚者であることを知らなかった(善意無過失)と認められた場合も、不倫相手への請求が認められにくくなります。「既婚者だと騙されていた」という事情は、法的な過失の有無に直結します。
「相場」と「実際に認められる金額」はなぜ違うのか

よく「不倫慰謝料の相場は100〜300万円程度」と言われます。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、実際に示談や裁判で認められる金額は、相場を大きく下回ることも珍しくありません。
読者が誤解しやすいのは、「相場=自分がもらえる金額(または払う金額)」と捉えてしまうことです。相場はあくまで多くの事例を平均的に見たときの数字であり、個別の事情によって上にも下にも振れます。婚姻期間が短い、子どもがいない、不貞行為の期間が短い……こうした要素が重なると、相場より低い金額になることもあります。
また、示談(裁判外の合意)で解決する場合と、訴訟になった場合でも結果が異なることがあります。弁護士が交渉に入ることで、適切な金額に落ち着くケースも多いです。「請求されたから全額払わなければならない」とも、「請求すれば必ず満額もらえる」とも、一概には言えないのです。
減額を主張する側が知っておきたいこと

慰謝料を請求された側の立場から見ると、「どうすれば適正な金額に収められるか」は切実な問題です。いくつか知っておくべき点があります。
示談書に安易にサインしないことが大切です。感情的になっているときや、早く解決したいという焦りから、実態に合わない高額の慰謝料に同意してしまうケースがあります。一度合意した内容を覆すのは非常に難しくなります。
また、減額事由がある場合、それを適切に主張するためには法的な知識と交渉力が必要です。婚姻関係の破綻、自身の不知(知らなかった事情)、貢献度の差など、事実に基づいた反論をまとめることが重要になります。感情的な主張ではなく、法的に認められる根拠を整理することが求められます。
請求する側が陥りやすい誤解

一方、慰謝料を請求する側にも、事前に知っておくべき現実があります。
「不倫した事実があれば、あとは請求するだけ」と思われがちですが、証拠の質と量が非常に重要です。探偵による調査報告書やLINEのやりとり、ホテルの領収書など、不貞行為の事実を裏付けるものが必要になります。「なんとなく怪しい」という状況では、交渉においても裁判においても不利になることがあります。
また、時効(消滅時効)にも注意が必要です。不倫の事実と相手の氏名を知ったときから3年が経過すると、慰謝料請求権が消滅時効にかかる場合があります(民法724条)。「気づいていたけれどずっと我慢していた」という方は、時効の起算点を確認しておく必要があります。
弁護士に相談することで何が変わるのか

不倫慰謝料のトラブルは、感情が絡むだけに、当事者同士で話し合うと泥沼化することも少なくありません。弁護士に相談することで得られるメリットは複数あります。
まず、自分のケースで請求できる(あるいは支払う可能性のある)金額の見通しを、具体的な事情に基づいて判断してもらえます。ネット上の相場情報では拾いきれない「個別事情の評価」が得られるのは、専門家ならではの強みです。
交渉の代行も大きなメリットです。直接連絡を取り合う精神的な負担から解放されるだけでなく、法的に有効な示談書の作成や、過大・過小な金額への適切な対応も任せられます。感情ではなく根拠に基づいた交渉ができることが、弁護士に依頼する最大の利点のひとつです。
費用面が不安な方は、法テラスの法律相談援助制度を利用できる場合もあります。収入要件などの条件はありますが、費用の立替制度もあるため、まずは確認してみることをおすすめします。
慰謝料の金額も、交渉の結果も、状況によって大きく変わります。「自分のケースではどうなのか」を知るためにも、早めに専門家へ相談することが、双方にとって現実的な解決への近道になるはずです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談や専門的な助言に代わるものではありません。具体的な状況については、弁護士・探偵事務所などの専門家にご相談ください。
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